BASICとは
WHAT IS BASIC ENGLISH?
“Basic English is English made simple by limiting the number of its words to 850 and cutting down the rules for using them to the smallest number necessary for the clear statement of ideas. And this is done without change in the normal order and behaviuor of words in everyday English…Even with so small a word list and so simple a structure it is possible to say in Basic English anything needed for the general purposes of everyday existence,” said I.A. Richards in his Basic English and Its Uses (1943).
ベーシック・イングリッシュは850語の制限単語で, ほとんどすべてのことをいえる英語のシステムですが, その語法や文法は普通の英語と同じであることは, 上記のベーシックの例文でごらんのとおりです。
それを可能にしたカギのひとつは動詞の排除でした。たとえば “disembark” は “get / off / a ship” を圧縮して1語にしています。多くの動詞は圧縮語ですから, もとの要素に分解することができます:
“Go” + in, out, from, up, down などの方向語を使えば, 上図の7つの動詞は不必要になります(Walpole, 1941)。このようにして圧縮語をもとの要素に分解することで多数の語を減らすことができると同時に難解な語をわかりやすくすることにもなります。ベーシック・イングリッシュをまとめあげた C.K.オグデンはベーシックに「動詞」はないと宣言し, そのかわりに16の基本的な「動作語」があります: go, come, give get, take, put, make, keep, let, see, say, send, be, do, have, seem.
動詞がないことで文法的にかんたんになりました。Buy-bought, teach-taught のような語形変化を覚えなくても, get something でよろしいし, He teaches(taught) English ではなくて, He is(was) teaching English とか, He is(was) a teacher of English のように “-ing, -er” を付けていえるという規則があります。リストにある語には”-ed”をつけることもできますから, たとえば attack, attacked, attacker, attacking ということができます。しかし “Acid attacks metal” というと “attacks” は動詞になってしまいますから, 動詞を使わないベーシックでは “Acid gives damage to metal” のようになかみをあらわせばよいのです。また特定の動詞は特定の文型を選り好みしますから, “I asked a question to him” はダメで, “I asked him a question” といわねばならないという文型の問題が起こってきますが, ベーシックには “I said a question to him” の1文型しかありませんから, 迷うことがありません。このようにして不規則な文法に悩まされることが大幅に減りました。
圧縮語を要素に分けて表すときに起きることは, 感情的なもやもやが消えてしまうことです。たとえば “bitch” は女のひとの悪口をいうときに使われますが “female dog” には何の悪いこともありません。”Lust” というと何かいやらしい感じがするらしいのですが, “sex-desire” と Basic Dictionary に出ているので, わたしたちは, ああ, そうかと思うだけです。感情語を大幅に整理することもベーシック成立の過程で起こりました。使用頻度で語をえらぶと good, fine, nice, wonderful など好感をあらわす語は上位を占めますが, bad は漏れ落ちる可能性があります。しかし論理的に good/bad の対立は必要ですから, ベーシックには bad が入っています。そのかわり good で置き換えられる類語はリストに入っていません。ベーシックは統計ではなくて, 論理で選んであります。
ベーシック・イングリッシュはC.K.オグデンによって考案されたというよりは, 彼とI.A.リチャーズが共同で『意味の意味』(1922)を書いている過程で「発見」されました。語の定義をしようとすると, ある特定の少数の語がくりかえし, くりかえしあらわれてくるのです。これらの少数の語を整理したら, それだけですべてのことを言い表せる普遍言語の体系が作れるのではないか, という思いが浮かんできたのです。1928年頃から部分的に発表され, 最終的な形をとったのは1931年でした。『意味の意味』は意味を指示的用法と感情的用法に分けたことが画期的でした。その執筆の動機としては「ことばの魔術」による人類の破滅への危機感でした。ベーシックはそのような背景から生まれました。
ベーシックには3つの目的があると言われました。1)国際共通語として, 2)外国語としての英語への基礎として, 3)より深く意味をしらべる道具として。いま日本でわたしたちは2番目の目的は GDM によって, かなりの成果をあげています。3番目は英語圏では I.A.リチャーズたちの批評活動があり, 日本では室勝, 後藤寛などの仕事がありました。また海外の言語関係の研究で直接的には言及されていなくても, 間接的にベーシックの恩恵が認められる場合が多くあります。たとえば英語教授法で機能語と内容語を分ける考えは, ベーシック・リストで OPERATIONS として100語を1欄にまとめたことがきっかけであったともいわれています。 国際共通語は実質的にすでに英語になってしまっていますが, ネイティブの英語がむしろわかりにくいことが多いので, 彼ら自身が反省してほしいです。それと国際よりも学際的に異なった専門間で急速に分化しつつある情報が共有されるために, 発信者のみなさんが, もうすこしベーシック的に発想してほしいのです。日本における直接的影響としては土居光知が「基礎日本語」を1943年に発表しましたが, その目的は専門家でない普通のひとにとって「たやすく知識を伝える文体を作る」ことでした。つまり知識とか思想が文化人だけのものでなく大多数のひとによって共有されたいというねがいがあったのです。ベーシック以外でオグデンの大きな功績は編集者として, 専門のタコツボから学者を引き出して共通の広場を活性化したことにありました。『意味の意味』の共著者リチャーズは1945年にベーシック850語から500語をえらんで “The Pocket Book of Basic English” (のちに “English Through Pictures” と改題)を作りましたが, 人類が生き残るためにために必要な最低限の共通理解を確かなものにしておきたかったのです。
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日本ベーシックイングリッシュ協会
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