GDMの原理
GDMについてリチャーズ自身のことばでまとめたものが1947年6月19日パリのユネスコ会議に提出されている。
入門期における外国語教育の原理
- 新しいセンテンスあるいはセンテンスの要素を学習するのは,それが場面にどのように応用されるかを見ることによる。
- それが見えるように,センテンスと場面をいっしょに提示することが教えるということだ。
- 以下,SEN-SITと省略してあらわすのは,センテンスに意味を与える場面situationにおけるsentenceを組み合わせた単位である。
- 外国語を効果的に教えることはSEN-SITを作り,配列し,提示し,テストすることによって成り立つ。
- それぞれの言語には,それのSEN-SITを配列するのに,理想的な順番がある。
- この理想的な順番においては,
- それぞれのSEN-SITのあいまいさは,この順番のなかでは,最小限である。
- それぞれのSEN-SITは,あとにくるものへの準備となる。
- それぞれのSEN-SITは,あとにくるものによって確かなものになる。
- 新しいSEN-SITにより,すでに教えられたSEN-SITが混乱させられることは最小限である。
- それぞれのステップが他のステップを支え,支えられあうような有機的順序だては Grading によって可能となる。「段階づけ」をこのように理解すれば,それは順番のなかにおける部分相互間の質的な問題であって、前後のレッスンにおける単語の数といったような量の問題ではない。
- 文の構造に対応して,場の構造が容易に認知できるばあいには,そのSEN-SITは明快であるといえる。
- 良い段階づけではじめに使うSEN-SITはできるだけ要素が少なく,できるだけ明快なものである。
- 文の構造が学習者に見えるのは,文の要素が場の要素に対応してどう変わるか認知することによる。構造とは,変数の値が変わることにかかわらず一定でありつづける形のことである。
- It is here.
- It is there.
- He is there.
- 変数の変化をとおして構造を教えるために選ぶ単語は,使いみちの広いものであるべきだ。
- 使いみちの広い単語とは
- 学習者がそれを使うことによって自分の知識をできるだけ早く広範囲にわたって使うことができる。
- あとにつづくことを教えるのに一番良く準備になること。
- その語のたすけによって他の使いみちの広い語を説明できるようなもの。
- 英語のばあいには,もっとも使いみちの広い(そして概してもっとも頻度の高い)語は
- ベーシック・イングリッシュ語表の第一欄にある機能語である。
- 実物や(絵にかいて)見せることができる日常的な物品と,その性質。
- それらのなかで最初に使うべきものは,もっとも明快なSEN-SITを生じさせるものである。
- 疑問文は,肯定文の語順が確立するまで,延期するのが賢明である。
- 学習者はそのようなSEN-SITの配列を進みながら,それらの要素と構造を練習しなくてはならない──ただし単にリピートするのではなく,既習の要素を新しい構造において使い、変化した要素で同じ構造を使いながら,新しいSEN-SITを経験することによるのである。
- そのような段階づけがあれば,母語による助けは必要でなくなる。翻訳をさけるべき理由は
- 母語の「構文」が干渉して,かたことの外国語から出られなくなる。
- 母語の「音素」が干渉して,へんな発音の原因になる。
- SEN-SITのかわりに,母語との連想がおこる。このため「あたらしい言語でかんがえること」ができなくなる。本来これは最初 から可能なことである。
- 翻訳は, 外国語学習の進んだ段階では望ましい練習であるが,初心者にとっては混乱と無駄の原因となる。段階づけられた提示──正しい順序で配列されたSEN-SITによれば──母語による説明とか「相当語句」はまったく必要がなくなる